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LO/ST CO/LO/RSの創作S/S+ラクガキブログ。 白騎士コンビを贔屓ぎみですが主人公最愛・オールキャラと言い切ります!
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修羅場続きでなかなかアップできなかったガールズトークSS、ルート未定でユフィとナナリー。ハロウィン関係ない更新です…。

恋バナをテーマに書いていたのですが、長くなってしまったので途中で切りました。
恋に恋してようが何だろうが、誰かを好きという言葉を胸に秘めてる子はむちゃくちゃ可愛いとおもいます。

最後になりましたが拍手ボタンを押してくださった皆様本当にありがとうございました。すごく嬉しかったです!
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以前無料配布したSS、ライとシャーリーとリヴァルでライナナ。
(続きを読むからどうぞ)
「遅い! どこで夜遊びしてたのよぅ〜!」

いきなり誰かに抱きつかれたルルーシュは、そのまま無理な姿勢で部屋へと引き込まれてバランスを崩した。
倒れずに済んだのは、横から伸びてきた腕が自分に抱きついた女性ごと支えてくれたからだ。
ルルーシュの視界を埋める細いうなじからは、ほのかなシャボンの香りと濃いシェリー酒の匂いが漂う。既に立っていることすら億劫なルルーシュにはその刺激は強すぎ、くらりとめまいがした。

「ルルーシュ、ミレイさんの言う通りだよ。こんなに遅くなるなら電話の一本ぐらい入れてほしかったな」

咎めるというよりは、心配していたという感情の滲んだ心地良い声に、素直な謝罪の言葉がルルーシュの口をついた。

「すまない。ちょっと…立て込んでいたんだ」
「そうか。じゃあ、とにかく座って」
「早くぅ!」

ライはそれ以上は尋ねることなく、ルルーシュからミレイを引き取り席を勧めてくれた。そのまま片腕でミレイを抱えると、カーディガンを羽織らせるべく奮闘をはじめる。ミレイが身じろぐ度にドレスのあちこちに入ったスリットから桜色に上気した肌が大胆にのぞいた。その色鮮やかな花柄のドレスに一層咲き誇るアネモネの花が、ルルーシュの目を惹きつける。
露出の激しい魔女との生活でそれなりに免疫の出来たルルーシュも、今日のミレイのパーティードレスは目のやり場に困る代物だった。何しろ面積と縫い代が極端に少ないのだ。
ライの頬もほんのりと赤く染まっている。感情が表に出にくい男だが、あれは酒のせいではないだろう。

その会長が持ち込んだのか、部屋の中央には壁に追いやられたダイニングセットの代わりに毛布のかかった低い箱机が鎮座している。
たしか…そうコタツという日本の暖房器具だ。
卓上のコンロからは良い匂いがただよい、ミカンの入ったカゴのとなりには色とりどりのお菓子の箱が山積みになっている。
その周りに、ボンボンチョコレートの包み紙と空き箱がいくつか転がっていた。ミレイの酔った原因に眉根を寄せたルルーシュだったが、仮に自分がこの場にいたとしてもミレイを止めることはできなかったという結論にたどり着き、それ以上考えることを止めた。
とりあえず嘘をつかずに済んだことにほっとしたが、まだ肝心な二人は顔さえ合わせていない。

ナナリ−はコタツへ足を入れ一心にミカンの皮を剥いていた。
かなり怒っているのだろう、ルルーシュには目もくれようとしない。自業自得なのだとわかっていても、疲れ切った心と体にその仕打ちは何よりも堪えた。

一体、どうしたら許してもらえるだろう。気持ちばかりが焦り何一つ言葉にできない。
霞がかかったような思考の中で、ルルーシュはライが今度は器用にクッションを使ってミレイを支えコタツへ座らせる様子をぼんやりと眺めた。コタツに落ち着いた途端ライに寄りかかってウトウトし始めたミレイは、まるでテレビドラマによく出てくる酔っ払って帰ってきた父親のようだ。
若干の呆れと可笑しな微笑ましさに、ルルーシュは思わず苦笑をもらした。

その時突然ナナリーに呼ばれた。

「お兄様、外は寒かったでしょう。早くこちらで足を温めてください」

慌ててルルーシュが顔を向けると、ナナリーはコタツの掛け布を持ち上げて待ってくれていた。それに吸い寄せられるようにして、ルルーシュはストンとナナリ−の隣に腰を降ろした。

「ナナリ−、すまない。今夜は一緒に食事すると約束していたのに…その、実は料理もまだ途中で」
「もう、お兄様! 一番先に言う言葉があるでしょう?」

怒っているというよりは呆れた様子のナナリーにルルーシュは面喰らった。
きっと拗ねた声で叱られるとおもっていたのに、すっかり大人になったナナリ−の成長が嬉しくもありさみしくもある。
どう答えていいかわからずただ妹の顔をまじまじと見つめ返したルルーシュに、ナナリーは剥き終わったばかりのミカンを皮で作った入れ物に乗せて差し出した。

「お兄様、新年おめでとうございます。これは私からの『お年玉』です」
「あ…ありがとうナナリ−。新年、おめでとう」
「おめでとう」
「おめでと〜ぅ!」
一通りの挨拶が終わり、ルルーシュがそろそろと足を伸ばすと爪先にふにゃりとした温かいものが触れた。

「ほわっ!」
「あっ、お兄様が当たりです!」

ナナリ−の嬉しそうな声に掛け布を持ち上げると、アーサーと目が合った。
にゃあ、とまるで挨拶のように鳴いたあと黒猫は頭をルルーシュの足の甲に載せて丸くなる。わずかな重みはほんのりと温かい。

「咲世子さん曰わく、冬の家族団らんはコタツにミカンが王道だそうだ」
「あと、猫もマストアイテムなんです!」

ライとナナリーの息の合った説明に軽い嫉妬を覚えて、ようやく調子を取り戻したルルーシュは一番の疑問を口にした。

「…お前がここにいるのはまだわかるんだが、どうして会長までいるんだ? いつもならニューイヤーはブリタニア本国の生家に帰るのに…それに咲世子はどうした?」

自分を棚に上げて詰問したルルーシュに気を悪くした様子もなく、ライは穏やかな笑みを浮かべて答えた。

「昨日の晩、ルルーシュが大慌てで出かけていくのが窓から見えたんだ。何だか胸騒ぎがして、ナナリーの様子を見に行こうとしたら、ちょうどミレイさんが来てくれた。だからここで一緒に君の帰りを待たせてもらうことにしたんだ。咲世子さんはついさっきアッシュフォードの屋敷の様子を見に戻ったよ」

するとミレイがトロンとした瞳をルルーシュへと向けてきた。

「だって、ライとナナちゃんにさみしいニューイヤーを迎えさせるなんて、できないじゃない。最近ルルちゃんはあてにならないから…おじい様にお願いして、私だけ日本に残ったのよ」

ミレイのおもいがけない言葉にルルーシュは目を見開いた。
ナナリーには咲世子が付いているし、少なくともライはさびしがるような年齢ではない。
ここにわざわざコタツや山盛りの菓子を持ち込んでまで、俺を一緒に待っていた理由がわからない。
ライは再び頬を染める。

「その…君には迷惑かもしれないけれど。記憶のない僕にとって、いつもそばにいてくれるルルーシュとナナリー、咲世子さんは本当に特別な人なんだ。だから僕はここで、君と一緒に新しい年を迎えたかった。みんなとルルーシュを待っていたかった。それにミレイさんは最初からコタツを用意してくれていて」
「もちろん! 私はライの、そしてナナちゃんとルルーシュの保護者ですから!」

ミレイは勢いよく両手を挙げてライに抱きつくと、そのまま後ろに倒れ込んだ。ライの声にならない悲鳴が漏れて、二人の姿はドサリという音と共にコタツの向こう側へと消えた。
ナナリーはその音に驚くこともなくクスクスと笑う。

「私…こんなに楽しいニューイヤーの晩は初めてです。お兄様を待っている間にゲームをしたり、おしゃべりをたくさんして…ずっとワクワクして、とても楽しくて。でもお兄様が帰ってきてくれたので、今が一番楽しいです!」

ニューイヤーを祝う習慣は、ブリタニアにはない。だから日本に来る前も年越しにこんな風に騒いだことはなかった。
時には母上がいない年もあった。その年はきょうだい2人で早々とベッドに潜り込んで、気が付いたら年が変わっていた…ルルーシュのニューイヤーの記憶といえばそのくらいだった。

本格的に眠ってしまったミレイをようやく寝かしつけたライは、起き上がるとコンロにかかっていたスープをルルーシュによそってくれた。

「咲世子さん特製の豚汁だ、体が温まるから飲むといい。咲世子さんは明日の朝に戻ってくることになっているから、そしたらみんなでおせち料理を食べよう」

峠を越した空腹感に胃が痛んだが、立ち上る湯気と香りがルルーシュの鼻腔を優しく撫でた。
ルルーシュの欲しかったものが、今目の前にある。


手に入れることに必死で奪うことしか考えられなかった。
いつの間にか、ギアスでしか人の心を思い通りにできないジレンマに苦しんでいた。

だから気が付かなかった。
ただ何の掛け値もなく、自分たちの存在を望んでくれる人がそばにいたことも、向けられていたまっすぐな愛情もーー今この瞬間まで理解してはいなかったのだ。

「お兄様?」

兄の感情の変化に敏い妹は心配そうな声を出す。
その声にルルーシュは冷えた指先でそっとナナリーの手に触れた。

「きゃっ、冷たい!」
「…ごめんよ、ナナリー。まだ体中がかじかんでいて…うまく、しゃべれそうにないんだ」

震える声をごまかしたくてそう言ったルルーシュの手を、ナナリーはきゅっと握り返した。

「…じゃあお兄様、早く温まって下さいね」

目の前のライは、見ているこちらが照れるほどの幸福そうな笑みを浮かべた。

「さぁ、冷めないうちにどうぞ」

ルルーシュは空いた方の手でマグカップを受け取った。指先に広がる温かさがもたらす痺れすら愛おしい。

己の選んだ道に後悔はなかった。
ブリタニアという世界を壊し、ナナリーが穏やかに暮らせる新しい世界を作るためならば、この先に待つ結末がどんなに惨めで残酷な終わりでも構わないとおもう。
そしてこれからも勝利を手にするために他人を、最後には自分自身もチェスの駒のように使い捨てるのだろうと確信していた。

それでも、もう考えずにはいられない。
明日も、その次の日もずっとずっとーー明日という1日を積み重ねていけば、またここで穏やかに新しい年を迎えられるのかもしれないと。
そんな馬鹿げたゼロに等しい可能性に、僅かな望みすら見いだそうとする自分の愚かさにルルーシュは唇を噛んだ。

俺には願うことすら許されはしない。だからこの願いは記憶の中に閉じ込めてしまおう。

生欠伸で涙をごまかしながら、ルルーシュはそっと瞳を閉じた。

(終)
ルルーシュは正門からクラブハウスまでの数百メートルの道のりを全速力で駆けていた。
既に顎は上がりきっており、呼吸も荒い。喉の奥では鉄の味がするし、足元からの振動はがんがんと疲れきったルルーシュの頭を揺らしてくる。
それでも立ち止まらなかったのは、一分一秒でも早く帰りたいとおもったからだ。

「はあ、はぁ……」

ようやく入り口へとたどり着くと、自分たちの部屋だけに明るい光が点っているのを確認する。
ニューイヤーの晩だ、ナナリーはきっと起きて待っていてくれているのだろう。もう小さな子どもではないが、兄としては身体に負担のかかる夜更かしをさせてしまったことに胸が痛む。

本当はもっと早い時間から2人だけで穏やかに新しい年を迎えるつもりだったのだ。
昨晩の夕方、玉城からの緊急連絡で呼び出されなければ。

携帯電話のディスプレイに浮かんだ名前を見て、一瞬ゼロが忘年会を断ったことに対する新手の勧誘かともおもったが、玉城はそういう意味では直球な男だ。だからルルーシュはわずかな逡巡のあと電話に出た。
トラブルの内容は通信エラーによってキョウトからの物資が届かないという単純なもので、そのスクランブル信号を解除できるのは暗号を作ったゼロ本人だけだった。自分の慎重さに足元をすくわれたことにルルーシュは内心で舌打ちした。

作りかけた料理の仕込みを中断し、日本のおせち料理にかかりきりだった咲世子に簡単な指示を出してから騎士団のアジトへと向かった。
ゼロである以上、ナナリーの願う優しい世界を叶えるためには目の前にある自分たちの小さな幸せは犠牲にせざるを得ない。
ルルーシュはとうに納得していた。たとえ何よりも大切なナナリーにさみしいおもいをさせたとしても、絶対的な世界を相手に反逆を起こしたゼロはもう引き返すことなどできないのだから。そのために他人の命すら奪うのが今の己の日常だ。
それでもできるだけ早く戻って来れるようにしたいとおもっていた。

日付けが変わる寸前にようやく届いた資材コンテナには、必要物資の他にも関西風の重箱料理が充分すぎるほどに詰まっていた。
キョウトからの使者は予定が遅れた関係で翌朝までは帰る足を失い、これだけの品物を貰っておきながらゼロだけがすごすごとどこかへ姿をくらますわけにも行かずーー結局使者の労いを兼ねた黒の騎士団の忘年会にも参加する羽目になったルルーシュは、気まぐれに様子を見に来たC.C.がピザ10枚で身替わりになってくれるまではクラブハウスへ戻ることができなかったのだ。


咲世子も元日は本国へ戻るアッシュフォード家の留守を預かるために屋敷へ戻ってしまう。ルルーシュが戻るまでは彼女がナナリーを1人にすることはないはずだが、それでも心もとない年越しになってしまったことだろう。

咲世子にもずいぶんと迷惑をかけてしまったが、今日はいつものようにもっともらしい言い訳をすることははばかられた。
新年早々口にする言葉が嘘というのはあまりにも不実とおもう。それが信頼する相手ならば尚更だ。
かといって事実を告げるわけにもいかない。
王の力を手にした契約の日から、ルルーシュの人生には仮面と枷がついてまわっている。己の心すら欺き続けた結果、それらはルルーシュの一部になってしまった。

だが謝るにしてもどう伝えればいいかがわからず、ピークをとうに超えた疲労に普段は高速回転するルルーシュの頭脳も相応しい言葉を選べなくなっていた。

時間は既に午前3時をまわっている。念のため、控えめにドアをノックしてから鍵を開けた。エントランスには電気はついているものの人の気配はない。だがルルーシュのためにつけてあった暖房の温もりが冷え切った身体をやさしく包んでくれた。

明日の朝は早めに起きて、ナナリ−の好きなフィッシュケーキとプルーンソースのポークソテーを熱々の状態でサーブしよう。切りのよいところまでの仕込みは咲世子に頼んでおいたので、そう手間取ることはないはずだ。
そんなことを考えていたら、ルルーシュは急に空腹感を覚えた。
そういえば夕方に味見をしたきり何も口にしていない。騎士団の面々の前で仮面を外して食事を取るわけにもいかず、豪華な重箱料理の数々は団員たちの胃袋にすべて収まってしまった。

とりあえずリビングに顔を出してから咲世子に雑煮でも頼もうかーールルーシュは、再び軽くノックしてから何も考えずにドアノブを回しリビングルームへと足を踏み入れた。

(続く) →2


足元もおぼつかなくなるほど乗ったシミュレータから解放されたスザクは慎重にタラップに足をかける。
こんな感覚は久しぶりで、それは今のエリア11がつかの間であっても平和だということに他ならなかった。
年末年始を控えて、テロリストもクリスマスやニューイヤーの準備で忙しいのかもしれないという冗談さえ政庁ではささやかれているほどだ。

ランスロットの緊急出動命令もここ半月はなく、ロイドは嬉々として新しいパーツのシミュレーションプログラムを二人のデヴァイザーに交互に試している。

シミュレーターを降りる際にはいつもロイドから他愛のない話やスコアへの賛辞をかけられる。
いつもならばあいまいに相づちを打って聞き流しているスザクだったが、今日ばかりは思わず振り返ってしまった。

「いまの話、本当なんですか?」
「本当だよ? やだなぁスザクくん、僕はこの手のことで君に嘘をついたことないじゃない」
「いえ、ロイドさんが嘘をつくだなんて思っていないです。ただ…あまりにも夢のようなことなのでつい」

ロイドは別に気を悪くした様子もなく、顔の前でラベンダー色をした液体の入った小瓶を軽く振ってみせた。

「彼の寝付きが悪いって聞いたから作ったのにね。どうも副作用の方が一般的には魅力的なんだよねぇ」

ロイドが作った非ピリン系の鎮痛剤兼睡眠導入剤は、寝る直前に考えていたことがそのまま夢の続きとなって現れるという。身体はしっかりと休まるのに頭の中では休むことなく意識があるわけで、人間にとっては人生の大部分を占める睡眠時間を有効に使える本当に夢のような薬だ。

「まぁ100パーセントとはいかないけどね。薬だから体質に合う、合わないもあるし。そこでスザクくん、君の協力がほしい。ほら臨床データ、僕だけじゃちょっと不安でしょ?」

スザクはロイドにのろのろと近づくとその小さな小瓶を受け取った。
「パーツ」だと言われてはいるものの、実際にロイドや特派のスタッフはデヴァイザーを物として扱ったことはない。スザクが知る限りではブリタニア軍の中でも一番人間らしい扱いを受けているとさえ感じている。
ロイドの頼みならば多少リスクがあっても二つ返事で了承するが、この試薬に関していえばまず心配はないだろう。
生身のパーツであるデヴァイザーの体調管理に、誰よりも心を砕いてくれているのがこの変わり者の上司なのだから。

「はい、もちろん協力させてもらいます。でもこの薬が製品化されたら、特派の資金不足も一気に解消されますね」

スザクの発言にロイドは大きなゼスチャーで肩をすくめた。

「僕はこの薬を学会に発表する気はないけど? スザクくん、君は物事の本質を理解していないねぇ〜。もしこれが一般に出回ったら、薬に溺れて廃人になる人間がどれだけ出ることか…人間はね、基本的に生まれもった能力を間違った方向に使う才能に恵まれているんだよ…ざーんねん!」

ロイドの言葉にスザクははっとした。
自分が眠る直前まで考えていたことがそのまま睡眠状態でも続く…もしそれが幸せだった頃の記憶や叶わぬ願いだったら。
少し想像力を鍛えれば、非現実の世界を自在に操れるようになるだろう。

まるでリフレインと同じじゃないか。
それに睡眠薬だって過剰摂取は中毒症や命とりにもなる。

自分の浅はかさを恥じて俯いたスザクに、ロイドは穏やかに話しかけた。

「僕はね、君や彼がそんな愚かな才能の持ち主だなんておもっていないから。実際この薬は使い方さえ間違えなければ様々な方面で役立てることができるものだとおもうし。でも僕は、世の中に貢献するよりも彼が悪夢から解放されてゆっくり休めるようになることの方に関心があるからねぇ」

ロイドの言葉に顔を上げたスザクは力強く頷き小瓶を握りしめた。

記憶の断片を思い出してきた彼は、ここのところ毎晩悪夢にうなされている。
昨日会ったとき、青白い顔にくっきりと浮かんでいた濃いくまを思い出す。

たとえ一時的な解決策にしかならなくても、この薬で過去の記憶の亡霊から彼が解放されて眠ってくれたらいいとーー記憶が戻ることを願いながらも、それを遮ることに加担することにスザクは多少罪悪感を覚えながらも、ロイドと同じく今の彼の体調を優先しようと決心を固めた。
とりあえず、自分がこの薬の効果を立証できれば安心して彼にも飲ませられる。

スザクは身の回りを手早く片付けると、ロイドに見送られて特派を大急ぎで後にした。

(続く)
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