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LO/ST CO/LO/RSの創作S/S+ラクガキブログ。 白騎士コンビを贔屓ぎみですが主人公最愛・オールキャラと言い切ります!
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足元もおぼつかなくなるほど乗ったシミュレータから解放されたスザクは慎重にタラップに足をかける。
こんな感覚は久しぶりで、それは今のエリア11がつかの間であっても平和だということに他ならなかった。
年末年始を控えて、テロリストもクリスマスやニューイヤーの準備で忙しいのかもしれないという冗談さえ政庁ではささやかれているほどだ。

ランスロットの緊急出動命令もここ半月はなく、ロイドは嬉々として新しいパーツのシミュレーションプログラムを二人のデヴァイザーに交互に試している。

シミュレーターを降りる際にはいつもロイドから他愛のない話やスコアへの賛辞をかけられる。
いつもならばあいまいに相づちを打って聞き流しているスザクだったが、今日ばかりは思わず振り返ってしまった。

「いまの話、本当なんですか?」
「本当だよ? やだなぁスザクくん、僕はこの手のことで君に嘘をついたことないじゃない」
「いえ、ロイドさんが嘘をつくだなんて思っていないです。ただ…あまりにも夢のようなことなのでつい」

ロイドは別に気を悪くした様子もなく、顔の前でラベンダー色をした液体の入った小瓶を軽く振ってみせた。

「彼の寝付きが悪いって聞いたから作ったのにね。どうも副作用の方が一般的には魅力的なんだよねぇ」

ロイドが作った非ピリン系の鎮痛剤兼睡眠導入剤は、寝る直前に考えていたことがそのまま夢の続きとなって現れるという。身体はしっかりと休まるのに頭の中では休むことなく意識があるわけで、人間にとっては人生の大部分を占める睡眠時間を有効に使える本当に夢のような薬だ。

「まぁ100パーセントとはいかないけどね。薬だから体質に合う、合わないもあるし。そこでスザクくん、君の協力がほしい。ほら臨床データ、僕だけじゃちょっと不安でしょ?」

スザクはロイドにのろのろと近づくとその小さな小瓶を受け取った。
「パーツ」だと言われてはいるものの、実際にロイドや特派のスタッフはデヴァイザーを物として扱ったことはない。スザクが知る限りではブリタニア軍の中でも一番人間らしい扱いを受けているとさえ感じている。
ロイドの頼みならば多少リスクがあっても二つ返事で了承するが、この試薬に関していえばまず心配はないだろう。
生身のパーツであるデヴァイザーの体調管理に、誰よりも心を砕いてくれているのがこの変わり者の上司なのだから。

「はい、もちろん協力させてもらいます。でもこの薬が製品化されたら、特派の資金不足も一気に解消されますね」

スザクの発言にロイドは大きなゼスチャーで肩をすくめた。

「僕はこの薬を学会に発表する気はないけど? スザクくん、君は物事の本質を理解していないねぇ〜。もしこれが一般に出回ったら、薬に溺れて廃人になる人間がどれだけ出ることか…人間はね、基本的に生まれもった能力を間違った方向に使う才能に恵まれているんだよ…ざーんねん!」

ロイドの言葉にスザクははっとした。
自分が眠る直前まで考えていたことがそのまま睡眠状態でも続く…もしそれが幸せだった頃の記憶や叶わぬ願いだったら。
少し想像力を鍛えれば、非現実の世界を自在に操れるようになるだろう。

まるでリフレインと同じじゃないか。
それに睡眠薬だって過剰摂取は中毒症や命とりにもなる。

自分の浅はかさを恥じて俯いたスザクに、ロイドは穏やかに話しかけた。

「僕はね、君や彼がそんな愚かな才能の持ち主だなんておもっていないから。実際この薬は使い方さえ間違えなければ様々な方面で役立てることができるものだとおもうし。でも僕は、世の中に貢献するよりも彼が悪夢から解放されてゆっくり休めるようになることの方に関心があるからねぇ」

ロイドの言葉に顔を上げたスザクは力強く頷き小瓶を握りしめた。

記憶の断片を思い出してきた彼は、ここのところ毎晩悪夢にうなされている。
昨日会ったとき、青白い顔にくっきりと浮かんでいた濃いくまを思い出す。

たとえ一時的な解決策にしかならなくても、この薬で過去の記憶の亡霊から彼が解放されて眠ってくれたらいいとーー記憶が戻ることを願いながらも、それを遮ることに加担することにスザクは多少罪悪感を覚えながらも、ロイドと同じく今の彼の体調を優先しようと決心を固めた。
とりあえず、自分がこの薬の効果を立証できれば安心して彼にも飲ませられる。

スザクは身の回りを手早く片付けると、ロイドに見送られて特派を大急ぎで後にした。

(続く)
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