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LO/ST CO/LO/RSの創作S/S+ラクガキブログ。 白騎士コンビを贔屓ぎみですが主人公最愛・オールキャラと言い切ります!
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<ブリタニア軍人編>特派ルートスザクED設定です。
スザク+主人公。
切れ目が悪かったのでちょっと長くなってしまいました。


これもひとつの幸せのかたちなのかなと書いていておもいました。

出会えたこと、おもいが伝わったこと。
足ることを知る者は、もう幸せになっていいんじゃないかな…。


「スザク。君は頭に血が上ると人の話を聞かなくなる。いいかい?ユーフェミア様は君がランスロットに乗り続けたいと言えば、皇族のしきたりや子どもよりも、君の意思を尊重するような女性だと僕は言いたかっただけだ。だから、あとは君の気持ち次第だと」

「……っ!」

凍てつくようだった眼差しに動揺が走る。大きく見開かれ、再び細められた翠の瞳はだが最後に影を宿していた。
スザクのそんな顔を見ているのは少し辛かった。でもその理由は僕にはわからなかったし、とにかく彼の言葉を待つしかなかった。

ふとうつむき、囁くような声でようやくスザクが言った。

「君は……どうしてそんな風におもえるの?君の思考は僕と違って常に論理的だ。いつだってその判断は正しかったし、これからだってそうなんだろう。だけど−−−君は何にもわかってない。僕の気持ちも、ユフィの気持ちも、何もかも」

「それはどういう意味だ?」

僕にはスザクの言っていることが少しも理解できなかった。

この世界で生きることを決めた時、そうアッシュフォードの学園祭でスザクに自分の過去を打ち明けたあの日から、僕たちは心から信頼しあえるようになったとおもっていた。

ギアスのことはいまだに話していないし、スザクが何か僕に言えない苦しみを抱えていることも薄々感じてはいたけれど、それ以上に強い絆で結ばれているのだと信じることができた。

こんなことは今まで一度もなかったのに。

「…すまないが、僕には君の言う言葉の意味が理解できない。僕はいつだってスザクの気持ちを一番に考えているつもりだ。皇女殿下のことは敬愛しているが、かといって君の感情を無視してまで二人の結婚に賛成するつもりはないよ。幸いあの方は聡明でお優しい姫君だから、スザクのおもいを正直に告げればいいと本当におもっているんだ」

僕を見返すスザクの視線に、強い光が宿る。それは今までに感じたことのない熱を纏っていて、思わず身を硬くした。
僕に向かって真っ直ぐに伸ばされた両腕。細かく震えるその腕は、まるで壊れ物に触れるようにしてそっと僕の背中に廻された。
至近距離で見上げるスザクの顔は照明を背に少しだけ影になっていて、それでも瞬きすら忘れてしまったかのように見つめてくる眼差しだけが怖いくらいにきらきらと輝いていた。

「−−−拒まないでくれるの」

そんな言葉を紡ぐ息さえも熱い。さっき抱きしめられた時よりももっとずっと、身体の中を満たす熱も苦しみも溢れ出てきて呼吸するだけで胸が痛んだ。

「スザク?」

何とか名を呼べば、ゆっくりとやわらかく抱き締められた。

出会ってから更に背の伸びたスザクは、今では僕よりも少し高くて、でも震える身体では大きな子どもがしがみついてきているようにしかおもえなくて。
だからゆっくりと腕を上げて、僕もスザクの背にそっと手を廻した。

「スザク、僕はどこにも行かないよ。ずっと君の側にいる。この世界に生きると決めたのは、君が僕を望んでくれたから。それが、僕がここにいる意味のすべてだから。だから君は好きなように生きればいい。心のままに、自分のおもいに正直に生きればいい。君の過去は消すことはできないけれど、君の未来は僕がすべてを懸けて守るから」

ぴくりとしたスザクの背中を、よしよしと撫でてやる。
肩にかかる吐息がせわしなくなって、僕は身体をひねってスザクの顔を見上げた。その顔は逆光でもはっきり分かるほど気の毒なくらいに真っ赤で、耳まで同じ色に染まっていた。

しかし目が合った途端にぎゅうと胸に抱きこまれてしまい、今度は物理的に窒息しそうになる。
背中をはたくことでそれを伝えたが、腕の力は少しも緩むことはなかった。仕方ないので実力行使でスザクの身体を少し押しやり、顔だけを何とか彼の肩に載せた。

大きく息をつくと、耳元で少し呆れた声で言ってやる。

「僕は君のためだけに生きている。僕の過去や罪も消すことはできないけれど−−−それでも、残された時間は君と君のおもいを叶えるためだけに使うと決めたんだ。それ以外、君は僕に何を望む?」

すぐに「ごめん」という小さな声が聴こえたから、僕はもう何も言わないことにした。

ああ本当に子どもをあやしている気分になってくる。そう己のすべてを投げ出してもかまわないとおもえるほどに愛しいわが子を。

もちろん僕は子どもを持ったことはないし、これからも持つことはないだろう。
だが、こんなに愛しい者を再び手にすることができたのだから、これ以上の過ぎた幸福は必要ないとおもっている。

母や妹、民の幸せを奪ってしまった僕だけど、スザクの幸せだけは守ってやりたかった。
だから彼が誰と結婚しようが構わないとおもっていた。彼の人生を、そして彼が愛する者をまるごと僕は守るつもりだったから。

でも、そんな僕のおもいがスザクを苦しめるなんて。
人間とは、自由を求めながらも鎖に繋がれることを望むやっかいな生き物なのだと改めて気付かされる。
スザクもユーフェミアも、その鎖を求めているのだろう。

ならば僕は、その望みを叶えてやるだけだ。

「スザク−−−−−−」


そして僕は、スザクが望む言葉をそっと耳元でささやいた。

(続く) →6
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