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LO/ST CO/LO/RSの創作S/S+ラクガキブログ。 白騎士コンビを贔屓ぎみですが主人公最愛・オールキャラと言い切ります!
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私事ですが、本日は父方の祖母の誕生日です。

故人です。でも、私は毎年お祝することにしています。その代わり命日には何もしません。というか、覚えてない…。

いつまでも、生きていてくれたことを、一緒に祝ったその日のことを覚えていたくて。

それが許される立場のうちは、そのままでいようかと。



ルルーシュBDのSSは、序章の設定でルルーシュ+主人公+生徒会メンバーです。

本編の濃いめのノリ?を自分なりの解釈で混ぜてみました。



遅くなってしまったけどルルーシュ、ハッピーバースディ!

よろしかったら続きを読むからお入り下さい。


俺の目前に、真っ赤なイチゴが迫る。




「はい、ルルーシュ」


控えめな微笑みを浮かべながら、ナナリーと咲世子が作ったショートケーキを載せた皿を片手に、彼は頂きにあったそれを人差し指と親指で摘まみ俺の口元へと差し出す。その様子を妙に生暖かい視線で見守る咲世子と、ケーキの感想を期待と不安のこもった表情で待つナナリー。

不覚にも「ピクニックでね、ナナリーにミートボールを食べさせたんだよ」と言った時の無邪気な笑顔をおもい出した俺は、喉元まで駆け上がった自分で食べるという言葉をぐっと飲みこんだ。

ナナリーに食べさせる……他の男だったらただじゃおかないところだが、記憶を失い喜怒哀楽の感情すら抜け落ちている彼が、純粋な心で感じた喜びは俺の心までも温かくするものだったから。


最初に会長と彼を見つけたとき、俺は蝋人形のような奴だとおもった。

瞳以外には色彩を持たず、虚ろな視線はまるでギアスにかかった人間のようで−−−そう、見えない操り糸の付いた蝋人形のようだと。

俺の直感が警報を鳴らし、瞬時に男がブリタニアが送りこんできた刺客である可能性を23通り思い付く。

だが直後に男は目の前で倒れ、面倒見の良すぎる会長の命令で生徒会で保護をすることになった。



そのまま数日間眠り続けた男がようやく目覚めたときも、俺が持っていたた第一印象は少しも変わることはなかった。

青白く端正な顔には何の感情も浮かべることなく、抑揚のない声で質問にだけ短く答える。



だいたい記憶がない、どうやってここまで来たのかもわからないだと?



あからさまに怪しすぎてもはやツッコミ所すらないというのに、やたら好意的な生徒会メンバーと会長の手前そうそう邪険に扱うこともできなかった。


俺は彼を伴い、宛てがわれたクラブハウスの部屋へと向かった。



「では今日はもう寝ろ。明日の朝また来るから」



「ああ、わかった」


少々尊大な物言いも、平淡な発音のためか不思議と不快感がなかった。

だが男自体が危険な存在であることに変わりはない。そのサファイアのような深い青の瞳には、魂というものが入っていなかった。

俺は再び警戒心を強めた。



実はアンドロイドなのかも知れないな。

初日に保健室へ担ぎこんだ際、僅かに触れた頬には確かに低い体温を感じたというのに、俺は今のブリタニアの科学力を推し量りいくらかは真面目にそう考えている自分に内心苦笑した。

男が刺客である可能性は、その夜眠りに落ちるまでには50通りを越えていた。


だが翌日−−−俺が留守にしていたたった1日の間に、生徒会のメンバーもナナリーも、すっかり彼を気に入ってしまっていたのだった。

その晩には、刺客である可能性も2つにまで減っていた。

仮面のようだった表情は、会長とシャーリーが半日付きっきりで構い倒した所為でぎこちないながらも口端を上げて笑うことを覚えていた。

午後からはカレンが「お世話係」として学園と租界を案内し、そして夕方には1人で繁華街をふらついている所をスザクが見つけて保護してやったのだという。


彼はどんな些細なことでも、皆が教えたことを正確に覚えその通りに実行した。

朝方には人形のようだった彼は、夜にはとりあえず人間へと進化していたのだった。


俺はと言えば、早朝から黒の騎士団へ出てしまっていたためにその変化にまったくついていけなかった。

しかも朝に様子を見に行くと言っておいたにも関わらず、扇からの急な呼び出しで夜明け前にクラブハウスを出てしまったこともあり少々バツが悪かった。


「今朝はすまなかった」


ナナリーと一緒にお茶を飲む彼にそう声をかければ、覚えたてのぎこちない微笑みを向けてきた。


「いや、大丈夫だ。こちらこそ心配をかけてすまない」


ああと曖昧な返事をして俺は早々に自室へと引っ込んだ。残る2つの危険性から俺が不在の際にナナリーをどう守るか、また今晩中に扇からの案件をメールで回答しなくてはということで頭がいっぱいだったのだ。


だから、判断を誤った。

彼の学習能力の高さ−−−それが雛の「擦り込み」のごとく強力なものだということに気付かなかったのだ。

その数日後に、こんなシチュエーションに陥るとはおもいもせずに。




「ルルーシュ?」


その呼び声にはっと我に返る。

イチゴは唇に押し当てられるまであと数センチにまで迫り、俺より少し低い彼の顔は目前20センチぐらいにまで近づいていた。


近い近い近い近い!


−−−誰だ、こいつに間違った常識を仕込んだのは!


俺は皆の会話をフルスピードで回想した。


「エリア11の誕生日にはね、イチゴのショートケーキが付き物なのよ」



パティシェが実演するデコレーションケーキのウィンドウに興味を持った彼にそう説明したというカレン。


「お嬢様に食べさせてあげて下さい、きっと喜びますよ」


と言ってミートボールを刺したフォークを彼に渡した咲世子。




「クラブハウスまで送っていくよ、僕たち友だちだろう?」


そして手を引きながら学園まで連れてきたらしいスザク(こいつの友人に対するパーソナルスペースの認識は明らかにおかしい)。


お前たち…間違っているぞ!



そのまま全部を正しいことだと認識した下手に学習能力の高い彼は、俺の冷や汗に不思議な顔をするばかりだ。


「ルル、早く食べちゃってよ?主役が食べないと私たちはケーキ食べられないんだからね〜!」


指先でフォークをくるくると器用に回すシャーリーの膨れっ面に、いい加減覚悟を決めて口を開けたその時だった。


「そうだよルルーシュ。キミ、食べるの遅すぎ」


いきなり後ろから抱きついてきたスザクの手にはフォークとケーキを載せた皿が握られており、そのまま器用に手元の皿から大きめの一口大のスポンジを切り出した。


「ほら、早く早く!」


前からはイチゴ、背後からの手にはスポンジを同時に詰め込まれて、俺は喉を詰まらせそうになった。

すかさず紅茶の入ったカップをうやうやしく口元に差し出すリヴァル。


「今日のルルーシュは王様、さあさあどうぞお飲み下さい!」



それをニコニコしながら眺めつつ、さっそくケーキを口に運ぶ女子メンバー。




悪ふざけに顔をしかめつつも、リヴァルが飲ませてくれた紅茶で一息つくと俺はナナリーに向かって話しかけた。



「ありがとうナナリー。ケーキはとても美味しいよ」


ぱぁっと薔薇色に頬を染めたナナリーが愛しくて、険しくなっていた俺の表情も自然と緩む。

そしてその俺を見上げていた彼の顔が、男の俺も見惚れるほどに美しい笑みを浮かべた。


すぐ耳元でスザクが息を呑む音が聞こえた。


「ルルーシュの…真似?」


スザクの言葉に、彼はこくりと頷く。

「笑顔、というのは難しいな。ミレイさんに言われたから毎日練習している」


またいつもの無表情に戻って答えた彼の眼差しは、真剣そのものだった。


俺は柄にもなく吹き出した。

その俺をジッと真顔で見つめる青い瞳−−−そこにはもう、確かな意思が宿っていた。


「これからは、俺もお前に色々なことを教えてやるよ。今のままでは、お前はまっとうな人間になれそうにないからな」


「ちょ〜っとルルちゃん、それどういう意味かしら?」


ケーキを頬張っていた会長がジロリと俺を睨んでくる。心なしか後ろから巻き付いているスザクの腕にも力がこもったような。


「どうもこうもありません。大体ですね……むぐ」


俺が彼の行動パターンについての問題点を指摘しようとすると、また口にイチゴとスポンジを詰め込まれた。


「ハッピーバースデー、ルルーシュ」


そう言って微笑むこいつに免じて…今日のところは見逃してやるか。俺から彼への最初のレッスンが、笑顔というのは悪くない。


「ルルーシュ、お祝いにお説教はなしだよ」


「ルル、ハッピーバースディ!」


その声に包まれながら。俺はとうにゼロになった刺客の可能性と今日という日に、少しだけ感謝をしてもう一度笑った。


(終)


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