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LO/ST CO/LO/RSの創作S/S+ラクガキブログ。 白騎士コンビを贔屓ぎみですが主人公最愛・オールキャラと言い切ります!
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家族に秘蔵の薄い本を発見されたorz



更新滞っていてごめんなさい
拍手の連載の方が進んでしまって、逆にしておけばよかったと涙目です

せっかくなので、以前拍手に載せていたお礼SS前半をUPしました
季節外れのポッ○ー話ですが、あとちょっとだけ続きます


最後になりましたがご訪問、拍手ボタンを押して下さった皆様本当にありがとうございます!

(ルート未定:生徒会にて)



 生徒会室の卓上に、渦高く積み上げられた赤い箱--だがその表現は決して大げさではなかった。
 高さおよそ2メートル、まるでスーパーのディスプレイのようにピラミッド型に組んであるのだ。クラブハウスの天井は一般の教室に比べて高めだったが、それでもあと少しで天井に届きそうだった。

 そのすぐ隣には、緑色の箱のポッキーで同じような山が築かれている。あまり甘くない種類だ。赤と緑。2色の組み合わせは、少し早いクリスマスシーズンの訪れを彷彿させる。

「ふふ~ん、スザクくん。授業には間に合わなかったのに、放課後のイベントにはばっちり間に合ったわね。感心、感心っと!」

 スザクが振り向くと、ミレイがポッキーを口にくわえて立っていた。ポキッというかすかな音と共に、半分ほどの長さがミレイの口の中へと消える。

「イベントって…まさか」
「そう! ポッキーゲームよ」
「ハイ! 会長! 俺やります! やらせてくださいポッキーゲーム!!!」

 ミレイのすぐ後ろに現れたリヴァルの目は、かなり本気だ。
 口調は平静を装っているが、手にしたポッキーの箱は既にぐしゃりと握り潰されている。多分中身は折れてしまっているだろう。

「そうねぇ…そこまでリヴァルがやる気なら、さっそくはじめましょうか?」

 はい、とミレイさんは手にしていた赤い箱をスザクに手渡した。おおかた予想はついていただけに、スザクに驚きはない。
 だがそれを見ていたリヴァルの顔色がサァッと青くなった。

「ちょっ…会長!」
「本当は、選手が揃ってからくじ引きするつもりだったのよ? でもこうなったら、ペアは早い者勝ちでいいわ。リヴァルはスザクくんと、ルルーシュがライとペアね」

 ミレイの言葉がよほどショックだったのだろう、リヴァルの顔色は今や紙のように白かった。
 もちろんスザクも、男同士でキスする趣味はない。だが軍の余興でやらされたことに比べたら何でもないし、要はゲームに勝てばいいのだ。
 スザクはミレイから受け取った箱から一本を取り出すと、軽くくわえて準備を整える。

「じゃあリヴァル、練習しようか。とりあえず僕に任せてよ」
「スザク、今日のお前……なんか怖いって! 何なのその余裕は? そんなにポッキーゲームの経験が豊富な訳??」
「…経験豊富なわけじゃないけど、要は僕たちがルルーシュとライに勝てばいいんだろう?」
「ポッキーゲーム?」

 涙目のリヴァルの後ろには、いつの間にかきょとんとした表情のライが立っていた。
 その視線はスザクの背後にある赤と緑の山へと動く。

「ああ、お菓子の箱を高く積み上げるゲームなのか」

 ライは何の屈託もなく、覚えたての綺麗な微笑みをスザクに寄越した。
 その顔をみた途端、スザクは急にいたたまれない気持ちになった。
 いくらゲームだからといって、何の躊躇もなくきわどい勝負をライにしかけようとしていた自分の心は、ひどく穢れている気がした。

「ライ、ちょうど良かったわ。今からね、男子生徒会メンバー全員参加でゲームをするの。ルールは簡単だけど、どうやらスザクくんが得意みたいだから、説明は彼に訊いてね?」
「ミレイ会長! べ、別に僕は得意な訳じゃありませんけど…!」
「あれー、スザク。さっきまでの余裕はどこに行ったんだよ?」

 リヴァルがしげしげとスザクの顔を覗き込んだ。さっきのお返しとばかりに、その目は明らかに面白がっている。

「(だってさ…ライは、何にも知らないのに何だか可哀想でさ…僕、さっきまで2人に勝つことしか考えてなかったから…)」
「(おいおいスザク! 勝負に情けは禁物だろ? じゃあ何か、お前はライが可哀想だから、俺たちが会長の前で熱い抱擁とチューを晒すことになってもいいのかよ!)」
「(そんなこと一言も言ってないよ!)」

 額を突き合わせたまま小声で何かを言い合っているスザクとリヴァルを、ライはぼんやりと眺めていた。
 スザクがくわえていたポッキーは、器用に噛み砕かれてだいぶ短くなっている。

「…そうか、ああやって会話しながら菓子を食べるゲームなのか。何だか難しそうだ」

 的外れな結論に達したライのつぶやきを聞いてしまったミレイは、笑いをかみ殺すのに必死だった。

 もともとミレイには、本気で男子メンバー同士にキスをさせるつもりはない。
 ただ繰り返し流されるCMや、クラスメートたちの会話に混じる、恋人同士だけに許された甘いイベントの雰囲気にちょっと参加したかっただけで--自分には、許されないことだとわかっているから、なおさらそうおもったのかもしれなかった。

 そう遠くない未来には、アッシュフォードの名を残すために、自由意思すら奪われる身の上。
 それで悲劇のヒロインを気取るほど子どもではないけれど、ミレイの突拍子もない発案に全力で付き合ってくれる生徒会のメンバーには、結局甘えてしまうのだ。

 そうイベントにしてしまえば、どんなことでも笑っていられるから。
そのときだけは、何も考えずにただの女子高生でいられるから。

 だから山のようにポッキーを買ってきたものの、実はミレイはゲームの明確なルールも景品も決めてはいなかった。
 意外にもスザクがある程度のルールを知っていたことに、内心でほっとしていたくらいだ。

 だいたいサボり魔のルルーシュが、今日生徒会に現れるかどうかもわからないのに、スザクもリヴァルも深刻になりすぎだ。
 その気になって悩んでいるスザクとリヴァルには悪いが、たとえ今からルルーシュが来ても、彼が今回のイベントに参加するとはミレイにはおもえなかった。丸め込むにしても、今回ばかりはツメが甘すぎてルルーシュの理詰めには勝てないとおもう。

 スザクはリヴァルと額を突き合わせたまま、まだ何かを話している。
 一方ライはというと、顎に手を当てたままスザクの口元をじっと見つめている。
 3人を見ているのはそれだけでも面白かったが、数分もするとミレイは退屈になってしまった。

 そろそろ刺激が欲しいわね。
 さっきまでの自分をすっかりと棚に上げると、ミレイは甘いというほどは甘くはない、チョコレートがけの菓子が詰まった新しい箱に手を伸ばした。


「ねえ、ライ。ルルーシュが来るまで私と練習しない?」
「ミレイさんと?」
「そう、私と」

 いたずらっぽくウインクをしながら、ミレイはすばやく一本のポッキーを取り出した。ライはポッキーの先をじっと見つめている。

「まずはやり方…ね。私がこっちの端をくわえるでしょ? そしたらライは反対側をくわえるの。2人で端っこから食べていって、よりたくさん食べることの出来たペアが優勝よ」
「両端から?え、あの…」

 ミレイの説明を言葉通りに理解したライは、みるみるうちに頬を染めた。

「女性とその、そんなことをするのは…」
「私とじゃ、嫌?」
「そ、そんなことはない。ただ、紳士的ではないとおもう」

 ライのもっともな物言いと心底困り果てたような赤い顔に、ミレイはこれ以上からかうのを止めにした。保護者としては、相応しい態度じゃないだろう。

「ふふ、冗談よ。ライは自主練習してね。でも練習で食べ過ぎて、本番に気持ち悪くならないようにね?」

 もう1人の保護者の躾が行き届きすぎたせいで、感情の乏しかった少年は随分な常識人へと育ってしまっていた。
 その成長がとても愛おしくて、ちょっぴり残念だとミレイは笑みを浮かべながらも小さなため息をもらす。
 手にしていた赤い箱をライの手に押し付けるように握らせると、ミレイはくるりとライに背を向けた。


「ミレイさん。このゲームには…どんな意味があるんですか?」


困っているというよりは、ミレイを心配していることが伝わってくる、温かくて優しい声がかけられる。
ミレイのこころがざわりと揺れる。


  --理由なんてないわ、ただ楽しそうだったから。
  --悪乗りしてごめんなさい、でもちょっとだけドキドキしたでしょう?


 いくらでもごまかしがきくのに、ライの声音がそれをミレイに許してくれない。

 声だけしか聞こえないからなおさら、強くまっすぐに伝わってきたライのおもいに、おもわず小さな声で本音を呟いてしまう。


「…恋人の日に、ちょっと憧れてたから」

 ミレイははっとすると、慌てて自分の口を手で抑えた。

 私ったら、何を言っているのかしら。ライにこんなことを言って、私--


「…なーんてね!」

 自分としては一番の笑顔を浮かべて振り向いたはずのミレイは、おもわず呼吸を止めてしまった。
 そこにいたのは、今までに見たこともないほどの真剣な眼差しをしたライだった。

「ミレイさん」

 聴き心地の良い声が、ミレイの鼓膜を震わせた。心臓がうるさくなって、ミレイはおもわず自分の胸を上からぎゅっと押さえた。
ライに聞こえるはずのない鼓動、でもそれがたまらなく恥ずかしかった。

「僕は……憧れたっていいとおもう。でも、それはこんなイベントにしないで、ミレイさんが特別だとおもえる人と過ごす日のために…取っておいてもいいんじゃないだろうか」

 ポッキーの箱を両手で大事そうに包んだまま、ライが真顔で言った言葉はミレイの心臓をさらに早鐘のように打った。

 確かにライは、ミレイの事情を何も知らない。でもライのまっすぐな言葉は真実だった。
 何でも茶化して諦めてしまうのは簡単なことだけど、いつかを、明日を夢見る権利は確かにミレイにもあるのだとライが気付かせてくれたのだ。

 そして今目の前にいるライは、誰よりもミレイのいつかを信じている。
 そのことが嬉しくて、ライの言葉なら信じられる気がして、こぼれそうになった涙をごまかしたくて、ミレイはライに向かって勢いよく駆け出した。

(続く)
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