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LO/ST CO/LO/RSの創作S/S+ラクガキブログ。 白騎士コンビを贔屓ぎみですが主人公最愛・オールキャラと言い切ります!
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<黒の騎士団編>ルルED設定です。
ルルーシュ(ゼロ)+主人公。

先に待つものはハッピーエンドではないかもしれない。
でも、ルルーシュと主人公には絶望ではなく光を見つめていてほしい。

よろしかったら「続きを読む」からお入り下さい。




プラチナブロンドの髪が、ボーンチャイナをを思わせる白い額と頬へ淡い影を落としている。
その隙間から覗くサファイアブルーの瞳。端正な横顔はビスク・ドールのようだ。
実際に手を触れれば低めの体温を感じる。彼は生きている人間なのだから当たり前なのだけど。

黙々と手元にある書類の束に視線を走らせ、正確な処理を行なっていく『ゼロの片腕』と今では呼ばれる男の横顔を俺は見ていた。

ギアスが暴走したあの日から、俺はゼロの仮面を人前で外すことができなくなった。
この左目が元の紫色に戻らない以上は、ルルーシュ・ランペルージとしても、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしても生きることはできない。

結果を手に入れるため、俺は正義を象徴する「ゼロ」と言う名の符号を作り出した。それはいつしか現実の俺を喰い尽し呑み込み、後にはその符号だけが残った。
たとえ生きていても、今までの俺自身の人生は永久に失われたのだ。
生きる屍とは、まさにこういうことを指す言葉だろう。

だがこの身が滅びようとも。魂が焼き尽されようとも。
それでもいいとおもったのだ。
ナナリーが笑って幸せに暮らせる「優しい世界」をつくるためなら、俺が、他の誰もが犠牲になってもかまわないのだと。

そうして失われた多くの命に懺悔をしながら、俺はこの身が朽ちるまでこれからも仮面を被り生きていく。

「───どうしたのルルーシュ?」

不意に目の前に立ち顔を覗きこんできた人物の声で、もの思いから現実に引き戻される。
蒼眼が真直ぐに俺の目を見つめている。
ひとと話す時には、マスク越しですら目を合わすことができなくなっていた。俺にはもう許されないことだとおもったから。

彼には俺のギアスは効かない。
だからこうして互いの顔を見て話すことができる。
彼の前ではルルーシュでいられる。
この世界に、俺が俺でいることを許される場所がまだあるのだ。

たった一人でギアスの業を背負い、生きる覚悟をした俺に、運命とやらは道連れを用意してくれた。
彼もまた、ギアスの理に生きるもの。
自らの意思で死ぬことすら叶わぬ、世紀を越えてこの世に存在する者だ。
俺たちの理は、決して交差することはない。こうして向かい合っていても、まったく違う理の中に存在しているのだ。

「少し疲れていたようだ。ぼんやりしてしまった」

君らしくないねと薄く微笑むと、身を起こし彼は部屋の隅にあるコーヒーメーカーからなみなみと注いだカップを二つ手にして戻ってきた。
たまには君の淹れる美味しいのが飲みたいけれど。それは僕らには過ぎた贅沢だからと口端を歪めた。
手渡された少し濃い、でも熱いコーヒーを俺は一口飲んだ。

「これでも充分美味いよ」

そうだねと、彼も今度は屈託のない笑みを浮かべた。

俺たちは、守りたいもののためにすべてを差し出し、そして───他人のそれすら差し出してしまった。
生きていようが死んでいようが、その罪は消すことも償うこともできはしない。
罪を身に宿したまま、己にできるすべてを尽しあがないを求め、いつの日かおとずれるやもしれぬ赦しの時まで存在し続ける。

『王の力は人を孤独にする』

だから俺たちは、一人だ。でも、一人じゃない。
少なくとも、今共に存在するこの時間の中では。
それは永久に失われたはずの俺の人生に、大切なおもいでとして刻まれていくのだ。

「今夜は久しぶりにチェスでもしないか?」

そう誘えば、まるでずっと前から用意してあったかのように真新しいチェス盤がスッと差し出された。
俺は大袈裟に肩を竦めて見せ、お前の書類は片付いたのかと問えば彼は男も見愡れるような極上の笑顔を作り応えた。

俺はゼロのマントを外し、少しだけアスコットタイを緩める。彼も黒の騎士団の制帽を机上に置くと、目の前のソファに腰を下ろした。俺は手元でパネルを操作し、ドアにロックをかける。

償いの時は、少しだけ中断される。
俺たちに与えられた刹那の時間。今はそのわずかな時を、二人で穏やかに過ごしたい。

「では始めようか」

その声で彼がルークに手を伸ばした。
そうだ───この「ゲーム」を楽しもう。
君が俺にくれた「明日」という名のギアスと共に、悠久の時を越えていこう。それは罪と共にあってもなお、輝きを失うことはない。

俺は、俺たちは人々の生まれ変わる姿を、明日を迎え続ける世界を見届けるという定めと喜びを手にしているのだから。

そう「チェックメイト」の声が聴こえるまでは。

(終)
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